メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

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  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2017年 8・9月号(No.229)
  • アカウントベースドマーケティングは
    世界に追いつくための
    突破口になります

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シンフォニーマーケティング株式会社
代表取締役
庭山 一郎 氏

米国で生まれたアカウントベースドマーケティング(ABM)は、すでに日本のBtoB企業においても導入が進められています。ABMは日本企業や日本市場に適した側面があるとされています。実際に導入した日本企業ではどんな成果が出ているのでしょうか。BtoBマーケティングのエキスパートであるシンフォニーマーケティングの庭山一郎氏に伺いました。

庭山 一郎(にわやま・いちろう)氏プロフィール
1962年生まれ、中央大学卒。1990年9月にシンフォニーマーケティング株式会社を設立。データベースマーケティグのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。1997年よりBtoBにフォーカスした日本初のマーケティングアウトソーシング事業を開始。製造業、IT、建設業、サービス業、流通業など各産業の大手企業を中心に国内・海外向けのマーケティングサービスを提供している。
日本人材ビジネス協議会(副理事長)、DMA(Direct Marketing Association:米国ダイレクトマーケティング協会:本部NY)会員。中央大学ビジネススクール客員教授。主な著書:『究極のBtoBマーケティングABM(アカウントベースドマーケティング)』(日経BP社)、『BtoBのためのマーケティングオートメーション正しい選び方・使い方』(翔泳社)
http://www.symphony-marketing.co.jp/

ABMの活用で苦労していた
新規顧客の開拓に成功

 庭山氏が代表を務めるシンフォニーマーケティングは、BtoB企業のマーケティング活動をサポートしています。同社が本格的にABMに取り組むきっかけとなったのは、2013年の米国のカンファレンスで、有効性の高さを目にしたことだと庭山氏は語ります。
「その講演では、マーケティングから供給された案件の90%を営業がフォローしているという驚くべき数字が紹介されました。とても信じられない数字でした。そこで講演後に尋ねてみたところ、通常のマーケティングなら不可能だが、ABMなら可能だと教えられました。それでは日本でも展開してみようと思ったのが始まりです」
 帰国後、日本の事情に合わせてABMを実行してみたところ、非常に高いパフォーマンスが得られ、本格的な展開を開始したそうです。具体的な効果について、庭山氏は新規顧客開拓の例を語ります。
 「日本企業において、マーケティング部門から提供された案件を営業がフォローする割合は、米国より低いのが現状です。そこで、あるクライアントの営業に、どこの会社の案件だったらフォローしますかと尋ねました」
 営業が提示したのは、“あるメーカーの特定の事業所の設計部門の課長以上に会いたい”という条件でした。このメーカーへの納入を実現しようと、営業部門はすでに3年ほどアプローチを続けてきましたが、いまだに口座が開いていませんでした。
 「これまで様々な形で接触を続けていたことから名刺などの情報はすでにありました。その中からターゲットパーソンを絞り、何に興味があるのかを徹底的に調べて、それに合わせてコンテンツを作り、反応を分析しました」(庭山氏)
 こうした活動の結果、約半年でターゲットパーソンとのアポイントの取得に成功し、1年以内に口座を開くことができたそうです。「“あの会社の口座が開いた”という話は、クライアントの社内で大きな話題になったと聞きます。このほかにも、調達先が完全に固定されていて営業部門がすっかり諦めていた企業との取引が実現するなどの事例も数多くあります。こうした事例を積み重ねることによってマーケティングと営業の協力関係が築かれていきます。ABMによって営業がフォローしたい案件を供給していくと、マーケティング部門に対する営業部門の評価が大きく変わり、情報共有や案件のフォローに非常に協力的になります」(庭山氏)  

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マーケティングの基本は
従来から変わらない

 新規顧客を開拓できた理由について庭山氏は、デマンドジェネレーションが着実に行われた結果だと分析します。
 「マーケティングの基本は従来から変わらず、R i g h tInformation、Right Person、Right Timeです。特にBtoBの場合、案件の発生は、顧客の内部の事情によるものがほとんどです。顧客の内部でニーズが発芽した時に、社内で情報収集を命じられた人に対して、その人が知りたい情報を届ければ、芽生えたばかりの案件をいち早く見つけることができます」
 つまり、ターゲットを定めて、全社の情報を統合して戦略的にマーケティングに取り組んだ結果が新規開拓という成果に繋がったといえます。まだ取引のない企業でも、内部には自分たちの製品やサービスに興味を持つ人が潜在しているはずです。そうした人達と繋がりを作り、それを維持するうえで、デジタルのコミュニケーションは非常に有効です。
 「競合よりも早く案件を見つけることで、顧客と一緒に課題の解決に取り組むことでできます。この段階では価格と納期ではなく技術やノウハウで勝負ができます。これは大きなアドバンテージです」(庭山氏)

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ABMは日本企業の良さを活かし
弱点を克服できる手法

 庭山氏は、ABMは日本企業に適したマーケティング方法だと言います。その理由は、顧客のボトムアップでの意思決定に対応しやすいからです。そもそも、米国でABMが普及した理由には、マーケティングや営業部門が決定権のある経営幹部だけを重視し過ぎた結果の反省があります。
 「米国の営業部門は、決定権のある役員クラスにしか会いたがらないことが多いのですが、さすがに役員に会っていきなり商談という訳にはいきません。一方、日本はもともとボトムアップの文化ですから、決定権のある役員よりも実際に情報収集をして稟議書を書く人たちをターゲットにすることに慣れており、商談に結びつけやすいといえます」
 最も大きなメリットは、ABMが日本の縦割り組織の間を繋ぐ役割を果たせることだと庭山氏は話します。
 「日本企業の多くは製品ごとに事業部が分かれており、営業は他の事業部のことを詳細に把握していません。顧客情報や訪問情報も共有されていませんから、担当営業は、担当する製品だけを売っていることがほとんどです。他部門の製品が売れる機会を逃していることが多いのです。事業部を跨いで情報を共有することで、ターゲットアカウントが必要とするものはすべて入れようというのがABMの目的です。縦割り組織を繋ぐ横糸がないという日本企業の課題を解決するうえで、高い実効性があります」
 庭山氏は、ABMの普及によって日本企業全体のマーケティングレベルが向上することを期待しています。
 「マーケティング先進国と比べると、日本企業のマーケティングは15年遅れていると言われています。しかし、追いつくために15年もかかるとは思いません。5年あれば追いつくことはできます。日本企業に向いているABMは、世界に追いつくための突破口となると実感しています」

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縦割り組織のBtoB企業 ABMを導入したBtoB企業

縦割り組織では、顧客との接点が点になりがち。マーケティングが情報共有と事業部間の橋渡しをすることで、顧客との接点を増やし、ターゲットアカ ウントからの売り上げを最大化する。

■縦割り組織におけるABM導入の効果

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