メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • 巻頭特集

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2017年 8・9月号(No.229)
  • ターゲットからの売り上げを最大化する
    アカウントベースドマーケティングの
    概要と活用のポイント

最近、BtoBマーケティングにおいて注目を集めている手法に「アカウントベースドマーケティング(ABM)」があります。ABMは、あらかじめ定めたターゲット企業に対して、マーケティングと営業部門が協調しながら戦略的にアプローチすることで、売り上げを最大化する手法です。新しい手法ですが、すでに導入した企業の多くで成果をあげています。売り上げが向上するだけでなく、マーケティング部門と営業部門の緊密な連携や社内における顧客情報の統合など、従来は難しかった組織の課題を解決する効果もあります。ABMとはどんなマーケティングなのか、その概要を解説します。

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多くの企業が課題としている
マーケティングと営業のミスマッチ

 「ABM」は、あらかじめ設定した特定の企業(アカウント)をターゲットとして、マーケティング部門と営業部門が協力して取り組むマーケティング手法です。より分かりやすい表現を使えば“営業部門が売りたいと思う企業に的を絞ってマーケティング活動を行うこと”だと言えます。数年前から米国で始まり、その効果の高さからBtoBマーケティングで特に注目されるようになりました。
 はじめにBtoB企業におけるマーケティングの役割を確認しておきましょう。マーケティング部門の重要な役割は、自社の製品やサービスを購入してくれそうな見込み客を見つけて、適切な情報を提供して育成し、機が熟したところで営業にバトンタッチすることです。例えば、展示会やセミナーを開催して来場者の名刺を集め、顧客が興味を持ちそうな情報(コンテンツ)をDMやメールマガジン、Webサイトなどを通して配信します。そしてコンテンツへの反応を収集・分析して、相手の興味や購買意欲を評価し、最終的に有望な見込み客リストを作成して営業に提供します。この一連の業務を「デマンドジェネレーション」と言い、これを行う組織を「デマンドセンター」と呼びます。デマンドジェネレーションで得られた見込み客を、営業が引き継いで売り上げに結びつけるわけです。
 ところが、BtoB企業の多くが、マーケティング部門が渡した見込み客を営業がフォローしてくれない、という問題を抱えています。BtoBでは営業が顧客にアプローチしなければ売り上げに繋がりません。マーケティング先進国の米国でも、マーケティング部門から渡された案件を営業部門がフォローする割合は50%程度と言われ、半分は無視されています。
 その理由は、マーケティング部門の考える有益な情報と、後工程である営業部門のニーズにギャップがあるためです。マーケティング部門は見込み客の数や将来性を重視しますが、期日ごとの売り上げ目標を達成しなければならない営業部門に重要なのは、どこの会社のどの事業部であるか、購入規模の大小や予算の有無、すぐに売り上げに結びつくかといった「見込み客の質」です。従来のマーケティング手法は、このミスマッチをなかなか解消できませんでした。

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ABMは営業の視点で
マーケティングを再設計する

 ABMでは、最初から営業部門がフォローしたい企業(アカウント)を最優先のターゲットに設定してマーケティング活動を行います。こうすると、マーケティング部門から渡される案件は、そもそも営業部門が希望した会社のものであるため営業は積極的にフォローすることが多くなります。その結果、マーケティング部門と営業部門の連携が実現し、マーケティングが売り上げ向上に貢献できるようになります。
 一般的なBtoBマーケティングでは、産業や業種などをキーにして顧客層を想定します。これに対しABMでは具体的な企業(アカウント)をターゲットに設定します。これを「ターゲットアカウント」と呼びます。前述のように、ターゲットアカウントの選定では、営業部門の意向が最優先されます。ターゲットは企業名だけでなく、部門(ターゲットデパートメント)や担当(ターゲットパーソン)まで細かく設定されます。例えば、「A社の○○事業所の設計部門のCAD担当者」「B社の□□事業部の情報システム部門のセキュリティー担当者」といった形です。ターゲットとなるのは企業ですが、実際に情報収集や決定を行うのはそこに属する個人ですから、アプローチや分析はこのターゲットパーソンに対して行い、それによって組織の状態を把握します。
 以降のマーケティング活動は、すべてターゲットアカウントを対象に行われます。例えば、セミナーやメールマガジン、Webサイトなどのコンテンツの内容は、ターゲットパーソンの興味を引くためのものになります。対象者が明確になっているため、より訴求効果の高いコンテンツが製作しやすくなります。効果測定の基準も、閲覧回数よりも誰が見たかを重視します。
 ABMの実施にあたっては、社内の顧客情報の一元化が不可欠です。例えば、ある営業部門にとって重要なターゲットパーソンの名刺が別の事業部のどこかに眠っているかもしれません。営業名刺や展示会出展時の名刺データはもちろん、過去の取引履歴やセミナー出展者リスト、Webからの資料請求時の入力データなど、これまで企業が集めた情報資産をフルに活用します。

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顧客と面で繋がることで
より強固な関係を築く

 ABMは、既存顧客と新規顧客の双方に対して効果が期待できます。比較的、早く成果をあげられるのが、既存顧客からの新しい案件(クロスセル)です。既存顧客の場合は、取引実績に加え、すでに顧客企業の多くの情報を持っているため、短時間に効果的なマーケティング活動を開始できるからです。ABMの効果は、これまで取引のなかった部門との新規取引や、新製品や新サービスの販売、複数製品の組み合わせによるソリューション導入といった形で現れます。
 日常的に取引があり、頻繁に営業が訪問しているようなアカウントであっても、営業担当がフォローできる範囲には限界があります。このため、顧客との接点は少数の担当者や製品だけの「点と点」に留まりがちです。これは大きな機会損失と競合に攻め込まれるリスクとなります。
 そこでABMを使うことで、営業がフォローできない部分をデジタルのコミュニケーションでカバーし、多くのターゲットパーソンとの関係を構築・維持します。こうして顧客と多くの接点を持つ「面の関係」を構築することで、顧客からの売り上げを最大化し、競合の脅威を減らすことができます。BtoB企業は特定の顧客からの売り上げ比率が多くなる傾向にあり、ABMはそれを戦略的に行うものです。ABMは、その導入効果の高さから、今後のBtoB企業にとって、不可欠なマーケティング手法と言えそうです。

 

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営業部門の希望した具体的なターゲット企業

ABMは、ターゲットとなる顧客を明確化したうえで、マーケティング部門と営業部門が協力して売上の最大化を目指す。
■従来のマーティング(上)とABM(下)の違い

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