メルトピア

経営基盤を強化するIT戦略

三菱電機メルトピア。様々な事例がご覧いただけます。

  • エキスパートインタビュー

  • 経営基盤を強化するIT戦略
  • 2011年 4月号(No.165)
  • 価値観や経験が異なる複数のメンバーの能力を引き出し
    組織・チームの力を最大化する

人物写真

NPO国際ファシリテーション協会 理事 
本間 直人 氏

ファシリテーションという言葉の普及・浸透だけに注視すれば、欧米と比較して日本では遅れをとっている感が否めません。しかし、日本人が昔から培ってきた文化、行動にはファシリテーションの要素が脈々と生き続けています。今回は、日本初のファシリテーション関連団体として2003年に設立され、ファシリテーションの概念、あり方、ファシリテーションスキルの普及・促進を行う特定非営利活動法人 国際ファシリテーション協会 理事の本間直人氏に、日本におけるファシリテーションの現状や、ITプロジェクトでの導入効果などについてお話を伺いました。

本間 直人(ほんま・なおと)氏プロフィール
合資会社 ホンマ・ドットコム代表。情報工学修士(人口知能、コミュニケーション)。防衛庁技術研究本部I種採用技官研究職等を経て、現職。講演活動では、コミュニケーション、ファシリテーション、コーチングなど、人と組織の活性化について、講演、研修講師として定評がある。笑いあふれる参加参画型研修が特徴。NPO法人国際ファシリテーション協会理事、NPO法人学習学協会理事。一般社団法人 ヒューマンウエア研究機構 代表理事
URL:http://www.homma.com/ (新しいウインドウが開きます)
URL:http://www.gnf.jp/ (新しいウインドウが開きます)

国内におけるファシリテーションに対する理解と
コーチングとの棲み分け

 「まるで笑い話ですが、ファシリテーションについて『施設管理のことですか?』と聞かれた経験があります。それはファシリティです。私がファシリテーション、ファシリテーターという言葉を耳にしてからすでにおよそ四半世紀が経過しますが、国内ではこれまで明確な定義やイメージが浸透していなかった、というのが実態ではないでしょうか。しかし、近年、この傾向も変化してきており、ファシリテーションを取り入れたいという企業が増えてきています」
 NPO国際ファシリテーション協会 理事の本間直人氏は、ファシリテーションに関する日本国内の現状についてこう話します。
 本間氏によると、ファシリテーションの特性については、コーチングとの比較によってより明確になるといいます。
 「グループコーチングという概念もありますが、コーチングの基本は1対1です。これに対してファシリテーションは、1対多、場合によっては多対多という形態をとります。また、答えを教えるのではなく、対応する相手の力を引き出すサポートをしながら、その能力を伸ばしていくのがコーチングですが、ファシリテーションは組織やチームが目標を達成するために、段取り、合意の形式、学習、問題解決などを体系的に支援し、その推進に寄与するものです」。

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ITプロジェクトにおける
ファシリテーションの重要性

 「以前、私はIT技術者として人工知能などの研究に携わっていました。当時は特にプログラミングが好きな人がIT業界を選ぶ傾向が顕著な時代でした。コンピュータ処理能力の関係で、コンパイルの待ち時間等が発生するケースも多く、そのときに先輩社員が後輩を教えたり話したりすることがよくありました。しかし、現在のIT関連業務に従事される方は様々で、プログラミングがあまり得意でなく、開発する楽しさも知らない新入社員の方も少なくありません。一方で中間管理職はプレイングマネージャーとして色を強め、後輩の面倒を見る機会や時間も減ってきているのではないでしょうか」
 本間氏は、このようなITプロジェクトにおいても、ファシリテーションは大きな効果をあげると話します。チームで仕事を進める機会が多いITエンジニアですが、従来に比べると仕事そのものへの取り組み方・姿勢に課題がある場合もあるようです。問題は、現状から見た「理想の全体像」「喜びある未来」が見えない点にあります。特にソフトウェア開発などの場合には、個々の機能ごとに分割された仕様書を元に作業が進行するため、プロジェクト全体のゴールが見えにくくなります。現状からゴールまでの間に多くの課題が存在している場合でも、ファシリテーションによる小さな成功体験を通じて、達成感や過程での喜びを実感でき、また、チーム内でのコミュニケーションが促進されることで、プロジェクト全体を活性化することができます。

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小さな成功体験を実感させることで
自律型の歯車を回転させる

 ファシリテーターは、場を設定し、質問、発言、要約などを通じてメンバーの話を記録します。さらにコンセンサスを取り、意思決定を行うためのプロセスを推進します。そして最も重要な役割は、グループメンバーがお互いを理解し、小さな成功体験を通じて自発・自律的に動き出せるようにすることです。
 「ファシリテーションのセミナーでは、よく絵を描いてもらうというアプローチを取ります。それぞれのメンバーに、虹、山、木、川を描いてもらいます。後で見せ合うと参加者の中に驚きが広がります。同じ問いかけで描いた絵が、それぞれ大きく違うからです。これは、自分の思いを相手に正確に伝えることの難しさを知ってもらうため等の手法です。また、別のアプローチでは、ストローを使ってタワーを作ります。約25分を使い、チーム対抗で一番高いタワーを競います。ここでは、競争と協力、過去の成功体験が生かされない場合もあること、方向修正の判断などを体感し、タワーを完成するという身近な目標内で達成感・喜びを共有することができます」
 本間氏は、実際のプロジェクトにおいても、このような疑似体験と成功の実感が、ゴールへ向けたプロジェクトの活性化に大きく寄与すると強調します。

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“焚火”にたとえることができる
ファシリテーション

 欧米でファシリテーションという言葉は、リーダーシップやマーケティングといったキーワードと同様に、きわめて一般的に用いられています。これに対して、日本では言葉の浸透という面で、遅れをとっている感が否めません。しかし、本間氏は日本人が昔から培ってきた文化にはファシリテーションという言葉を用いなくとも、そのエッセンスが生きていると強調します。そもそもチームワークで働くという形態は日本人のお家芸であり、形には現れなくても「和風ファシリテーション」というべき活動がなされてきたと指摘します。
 最後に本間氏は、ファシリテーションを“焚火”に例えて話を締めくくりました。
 「焚火で燃えるのは焚き木です。焚き木を振り回して対立することもできますが、そこからは遺恨しか生れません。焚き木の内部には秘めた燃える力があり、その潜在的な力を引き出すためには、焚き木を集めて組むだけでいいのです。太い木、細い木、湿った木、乾いた木、同時にすべてが燃え出すことはありませんが、燃えやすい環境を整えれば、最後には大きな焚火になります。ファシリテーションは、この焚火における種火、そして環境作りにあたります。それぞれのメンバーが熱く活性化し、集団として自発・自律的に回りながら広がっていく。そんなゴールに向けてファシリテーションが適用される例は、今後ますます増えていくことでしょう」

説明図

人間の内在的自発性を強化する3つのステップ
※出典:「NPO国際ファシリテーション協会」資料-2011/2

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